« 徳川長期政権 | トップページ | 木陰で午睡 »

反骨の人

   1909年(明治42年)生まれというから、丁度我々の

   親父の世代である。

   その時代を背景とした人達の、ある典型ともいえる人生の

   足跡。その一端を、ある1冊の本によって伺い知るところと

   なった。

   松本清張の「半生の記」である。

   今更ではあるが、松本清張の創作活動は、推理小説、

   時代小説、社会小説、古代史 、ノンフィクション、評伝等々

   多岐に亘り、夫々の分野で著名な作品を残している。

   脅威の創作エネルギーといえるが、さらに驚くべきことは、

   その出発点が40代も半ばからという点であろう。

   周知の通り、「ある小倉日記伝」で芥川賞を受賞したのは、

   1953年、松本清張44歳の時である。

   「半生の記」は、それら創作活動に至る前、いわゆる

   出生から世(文壇)に出るまでの苦難の半生を赤裸々に

   綴ったものである。

   定職のない父親と、文盲の母、の一人っ子として、

   可愛がられて育ったが、終始貧困との戦いがついて回り、

   清張も小学校を出て働くことになる。

   以来、学生生活とか、青春とかいうものとは縁のない

   本人曰くの「灰色の生活」が持続する。

   その間、数年にわたる兵役生活も体験している。

   と、いかにも憂鬱な本のイメージになるが、この「半生の記」

   の救いは、この境遇から、いかに抜け出すかの、苦悩、

   工夫、努力 の物語でもある、という点であろう。

   ある同業作家が、数ある著名な作品のなかで、最も

   印象に残る作品の1冊として、「半生の記」を挙げていたのが

   なんだかわかるような気もする。

   数多くの作品のなかに、この「半生の記」のエッセンスが

   無意識に凍み込んでいるとでもいったらいいのであろうか。

   この「半生の記」を読み終えた時、ふと「反骨」という一言が

   頭に浮かんだ。

 

 

 

 

 

« 徳川長期政権 | トップページ | 木陰で午睡 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1211385/56969019

この記事へのトラックバック一覧です: 反骨の人:

« 徳川長期政権 | トップページ | 木陰で午睡 »